「予防歯科に力をいれています」
歯科医院のホームページをみると、よく目にする言葉です。
定期健診、クリーニング、メンテナンス。
患者さんの歯を守るために、さまざまな取り組みをしている歯科医院はたくさんあります。
では、それを見た患者さんは、
「よし!予防のためにこの歯医者へ通おう!」
と思うでしょうか。
私は、ここに一つの壁があると思っています。
「予防歯科を提供していること」と「患者さんが予防歯科に通いたいと思うこと」は別だからです。
予防目的で通う患者さんを増やすために必要なのは「予防は大切です」と繰り返すことだけではありません。
予防した結果、その人の生活がどう良くなるかまで伝えること。
先日、まったく違う業界で、そのことに気づかされました。
きっかけはメガネ屋さんでした。
メガネ屋さんで気づいた「商品ではなく、その先の未来を売る」ということ

先日、メガネ屋さんへ行った時のことです。
私は目が悪くないのでなんとなく店を見ているとこんなポップが目に入りました。
「顔を明るく見せたいならこのレンズ」
「ニキビや肌の赤みを目立ちにくくしたいなら、こちらのレンズ」
その瞬間、
「え、気になる!」
と思わず興味を持ちました。
さきほどもお伝えしたように私は目が悪くないので
レンズそのものがほしくなったわけではありません。
加工技術について詳しくしりたかったわけでもありません。
いいな!と思ったのは
「このレンズを使えば、今より顔が明るく見た目がよくなるかもしれない」という未来です。
もし、
「こちらは○○という加工を施したレンズです」
と機能だけを記載されていたら、ここまで心は動かなかったでしょう。
同じ商品でも、
「何ができる商品なのか」を説明することと、「あなたがどう変わるのか」を伝えることは違う。
そこで、ふと思いました。
これ、予防歯科も同じではないでしょうか。
実は「予防」に関心のある人がすくないわけではない
「予防で通ってくれる患者さんが増えない」という話を聞くとという話を聞くと
そもそも予防に興味がある人が少ないのでは?
と思うかもしれません。
ところが、数字を見ると少し違います。
厚生労働省の令和6年歯科疾患実態調査では、過去1年間に歯科検診(健診)を受けた人は63.8%
前回令和4年調査では58.0%だったため、受診割合は上昇し、初めて6割を超えました。
つまり、
「痛くなる前に歯科医院へ行く」という行動をしている人は、すでに一定数存在しています。
だとしたら、
「予防に興味のある患者さんがいない」
だけではなく、
予防に関心のある患者さんに「なぜあなたの医院へ通うのか」が伝わっているか
という視点もひつようなのではないでしょうか。
「予防歯科に力を入れています」だけでは、患者さんのメリットが見えない
例えば、
「当院は予防歯科に力を入れています」
「3ヶ月ごとの定期健診をおすすめしています」
「定期的にクリーニングを受けましょう」
どでも間違っていません。
ただ患者さん側には、
「それをすると、私に何がいいの?」
が残っています。
今、歯は痛くない。
仕事もある。
部活もある。
家事もある。
子育てもある。
休日は遊びたい!!!
そんな中で、
「予防が大切だからきてください」
だけで優先順位を上げてもらうのは、簡単ではありません。
だから必要なのは、
「予防歯科」という言葉を、その人の生活に翻訳することなのだと思います。
患者さんが欲しいのは「予防歯科」ではなく、その先にある未来
例えば
「3ヶ月ごとに定期健診を受けましょう」
ではなく、
「できるだけ何度も治療に通わなくて済む状態を、一緒に守っていきましょう。」
「虫歯を予防しましょう」
ではなく、
「できるだけ痛い治療をしなくて済む歯を目指しましょう」
「定期的にメンテナンスしましょう」
ではなく、
「これからも自分の歯で食事を楽しめる状態を、一緒に守っていきましょう」
「お子さんも定期健診へ」
ではなく、
「歯医者を”痛くなったら行く怖い場所”にする前に、歯を守る場所にしませんか」
やっていることは同じです。
しかし、患者さんから
すると価値は変わります。
患者さんがほしいのは、
定期健診そのものでも、
クリーニングそのものでもなく、
その先にある生活なのかもしれません。
同じ予防歯科でも「欲しい未来」は人によって違う

メガネ屋さんで私が面白いと思ったのは、全員に同じ売り方をしていなかったことです。
その人が求めているものによって、レンズの価値を変えて伝えていました。
予防歯科も同じではないでしょうか。
子育て中の親御さんなら
ほしいのは
「子どもに歯で苦労してほしくない未来」
かもしれません。
私は2人の子どもを1歳から歯科医院へ連れて行き、現在まで虫歯ゼロで過ごしています。
私が欲しかったのは「定期健診」そのものではありません。
できるだけ治療を経験してほしくない。
大人になっても、健康で自分の歯で過ごしてほしい。
そんな未来がほしかったのです。
仕事や学校で忙しい人なら
ほしいのは
「何度も治療に通う時間をできるだけ減らしたい」
かもしれません。
「時間があるから予防する」のではなく、
「将来、治療に時間を取られたくないから予防する。」
こう考えれば、予防歯科の意味も変わります。
治療費が気になる人なら
ほしいのは
「できるだけ大きな治療を避けたい」
という未来かもしれません。
治療が必要な時は突如としてやってきます。
自費治療はそれなりの金額がする」
「大きな治療が必要になる可能性をできるだけ減らすために、今から管理する」
経験したことがある人は共感いただけるのではないでしょうか。
これからも食事を楽しみたい人なら
ほしいのは
「できるだけ長く、自分の歯で好きなものを食べれる生活」
かもしれません。
つまり、全員に同じ「予防歯科」を伝える必要はない。
その人が守りたい未来と、予防歯科を繋げる。
「予防しなければいけない」から、
「それなら私もやりたい」へ。
メガネ屋さんで私の気持ちが動いたように、
予防歯科にもそんな伝え方ができると思うのです。
その「未来」は、患者さんが歯医者を選ぶ前から伝わっていますか?
ここで、もう一つ考えたいことがあります。
どれだけ診療室で予防の価値を丁寧に説明していても、
その患者さんから選ばれなければ、説明する機会そのものがありません。
患者さんは、来院する前から歯科医院をみています。
そして2026年にGoogle検索を日常的に利用する508人を対象に行われた民間調査では、
歯科医院を比較・検討する際「最終的な決め手として最も重視した情報源」は、
Googleマップの口コミ 45%
歯科医院の公式サイト 33%
という結果でした。
もちろん、これは508人を対象とした民間調査なので、全ての患者さんにあてはまる数字ではありません。
それでも、
患者さんが来院する前から、ホームページやGoogleマップ上の情報を判断材料にしている
ことは無視できません。
実際に私も先日矯正をする際、歯は一生ものだからこそホームページや口コミを必ずチェックしました。
「予防歯科があります」ではなく「ここに通う理由」が見えるホームページへ

ここで、予防歯科に力をいれている歯科医院のホームページを考えてみます。
「予防歯科」というページがある。
定期健診の必要性が説明されている。
クリーニングについて書かれている。
もちろん、それも必要です。
ただ、そのページを見た患者さんが、
「ここに通ったら、私にどんな良いことがあるんだろう?」
まで想像できるでしょうか。
私の場合は
「託児環境」があった
子どもの歯科記録を手帳に残してくれる
そんな環境から長い間引っ越して少し遠くなっても同じ歯科医院でお世話になりました。
子どもの歯を守りたい親御さんなら
「小児予防歯科があります」
だけでなく、
「子どもが怖い場所と思わないか」
忙しい人なら
「定期健診をおすすめしています」
だけでなく、
「平日は何時まで対応してくれるか、週末の診療時間」
きれいなホームページを作ることと、患者さんが「ここに通う理由」を見つけられるホームページを作ることは、同じではありません。
Googleマップの口コミにも「何のために通う医院なのか」は表れる
そしてもう一つが、Googleマップの口コミです。
例えば
「虫歯を治療してもらいました」
「急な痛みに対応してくれました」
という口コミが中心なら、初めて見る人には
「歯に問題が起きた時に行く場所」
として映るかもしれません。
そして、治療においてなかなかポジティブな感情は発生しにくい。
一方、
「何年も定期的に通っています」
「子どもの頃から通っているおかげで虫歯になったことがありません」
「定期的に通っているおかげで歯について困った時相談できるので大きなトラブルにならずにすんでいます」
という体験が自然に語られていたら、
「健康な歯を守るために通う場所」
という医院像が見えてきます。
もちろん、特定の内容の口コミを書いてもらう、という意味ではありません。
大切なのは、
患者さん自身が「予防で通う価値」を感じられる体験があり、その医院らしさがWEB上にも自然に記されているか。
ということだと私は思っています。
まとめ「予防歯科をやっています」から「こんな未来をつくれます」へ
厚生労働省の調査では、過去1年間に歯科検診を受けた人は63.8%。
予防という考え方そのものが、誰にも届いていないわけではありません。
だから次に考えたいのは、
「予防歯科にきてください」ではなく、「なぜあなたがここへ通うのか」を伝えること。
メガネやさんで私がいいなと感じたのは、レンズそのものではありませんでした。
「顔が明るく見える自分」という、その先の未来です。
予防歯科も同じように、
定期健診を売るのではなく、
クリーニングを売るのでもなく、
その先にある患者さんの生活を伝える。
そして、その価値を診療室だけではなく、
ホームページやGoogleマップでも伝えていく。
患者さんが医院を知った瞬間から、
「ここなら、私が欲しい未来を一緒に守ってくれそう」
と思えるようにする。
予防を大切にする患者さんと、本気で予防に取り組んでいる歯科医院がもっと出会えるように。
「予防歯科に力を入れています」から、
「あなたのこんな未来を守ります」へ
予防歯科の価値は、もっと患者さんの言葉で伝えられるのではないでしょうか。
参考資料
・厚生労働省「令和6年歯科疾患実態調査」
・株式会社エクスコア「歯医者探しに関するアンケート調査」(2026年)
