「痛くなったら歯医者」の患者さんは、どうすれば「予防で通う患者さん」に変わるのか?

私は、20歳頃から予防のために歯科医院へ通っています。

こう書くと、

「もともと健康意識が高かったんですね」

と思われるかもしれません。

全く逆です(笑)

私が予防歯科を探し始めたのは理由は、歯医者が嫌いだったからです。

「もう治療したくない」が、私の予防歯科の始まりだった

子どもの頃の私にとって、歯医者は「虫歯になったら行くところ」でした。

学校の歯科検診で引っかかる。

詰め物が取れる。

歯が痛い。

そうなって初めて歯医者へ行く。

そして、行けば治療です。

これが本当に嫌でした。

痛い。

何をされているのか見えない。

目元を覆われて、怖い。

大人になった今でも、歯科治療はできるなら避けたい。

だから私はずっと不思議でした。

「虫歯になってから治すのではなく、虫歯になる前にずっと見てくれる歯医者さんってないの?」

今思えば、それが私にとっての「予防歯科」の始まりでした。

20歳頃、ようやく予防歯科をやっている歯科医院をみつけて、それから私は定期的に歯科医院へ通うようになりました。

ただ、私が通い続けているのは、

「予防歯科が大切だから」

だけではありません。

もっと切実な理由があります。

もう、できるだけ治療をしたくないからです。

一度治療したら、それで終わりではなかった

予防しかへ通うようになってから、新しく虫歯になる歯は増えていません。

しかし、昔治療した歯がずっと何の問題もなく過ごせるとは限りませんでした。

詰め物や被せ物のやり直しが必要になることもある。

状態によっては何度も歯科へ通う。

その治療の選択肢は、保険診療だけで心もとなく、自費診療となることもあります。

数万円、場合によってはそれ以上。

歯の治療って、身体的にも精神的にも大変ですが、意外と時間やお金もかかります

そんな経験を重ねるほど

「悪くなってから治すより、できるだけ悪くならないようにしたい」

とやはり思ったのです。

私にとって予防歯科は「意識が高い人がすること」ではありません。

痛い思いを減らしたい。

治療に使う時間を減らしたい。

できるだけ大きな治療を避けたい。

自分の歯をできるだけ長く使いたい。

もう、できるだけ治療をしたくないから通うところです。

だから子どもは1歳から歯医者へ

自分自身が歯で苦労したからこそ、子どもが生まれた時に思ったことがあります。

この子たちは、歯のトラブルできるだけ作りたくない。

だから2人とも、1歳の頃から歯科医院へ通っています。

私の暮らす地域では1歳頃に健診のハガキが届いたためそこからスタートしました。

歯が痛いから連れていくのではありません。

何も起きていない時から診てもらう。

必要なケアをしてもう。

これをずっと今も続けてきました。

そして、現在2人とも大きな歯のトラブルもなく、虫歯ゼロで過ごしています。

子どもたちにとって歯医者は、

「痛くなったら連れて行かれる場所」

ではなくて、

「自分の歯を守るために行く場所」です。

私が子どもの頃に持っていた「歯医者」のイメージとは、まったく違います。

予防の大切さを知っているだけでは続かない

一方で歯科医師の方とお話をすると、こんな声を聴くことがありました。

「仕事復帰とともに連れて行くことが負担になり遠のいてしまう」

「小さい頃は親御さんが連れてきてくれるけど、部活が始まると来なくなる」

「受験が始まると定期健診が後回しになる」

「予防で継続して来てくれるのは、比較的時間に融通の利く年齢層に偏ってしまう。」

これを聞いたとき、すごく分かるなと思いました。

だって、今は痛くないから。

中高生なら、

部活がある。

塾がある。

受験がある。

友達との予定がある。

大人になれば、

仕事がある。

家事がある。

子育てがある。

せっかくの休日には、やりたいことだってあります

そんな毎日の中で、

「今はどこも痛くないけれど、そろそろ歯医者へ行こう」と思ってもらう。

実は、かなり難しいことではないでしょうか。

「忙しくて行けない」のではなく、優先順位が上がっていないのかもしれない。

私は、「患者さんの予防意識が低いから来ない」だけではないと思っています。

今、困っていない歯のために時間を使うメリットが、まだ自分ごとになっていない。

だから他の予定に負けてしまう

「虫歯にならないために定期的に来てください。」

と言われれば、大切なのはわかります。

ただ、

「いつか虫歯になるかもしれない」と、

「明日の仕事

「来週の部活」

「来月の受験

を比べたらどうしても目の前の予定が勝ってしまいます

これは患者さんが怠けているわけでも、歯を大切にしていないわけでもないと思います。

人として、ごく自然なことです。

だから、

「予防は大切ですよ」だけでは、忙しさには勝てない。

私はそう考えています。

「忙しい人ほど予防した方がいい」としたら?

ここで、私自身も興味深いと思った研究があります。

2024年に日本で発売された研究では、企業に勤める人を対象に、5年間の歯科検診の受診状況と

その後の歯科医療費や通院人数との関係が調べられました。

その結果、5年間に集団歯科検診を4~5回受けいた人は、一度も受けていない人と比較して、

年平均の歯科診療医療費が約13%低く、

歯科の診療実日数も約14%少ない

という関連が確認されています。

もちろん、

「歯科検診を受ければ、必ず医療費が13%安くなる」

という意味ではありませn。

この研究から、健診そのものが医療費を下げたと単純に因果関係まで断定することはできません。

それでも私は、この結果を見て思いました。

「時間がないから予防に行かない」という考え方は、もしかしたら逆なのかもしれない。」

時間がない人ほど「治療時間を取られない」ために予防する

歯が痛くなってしまったら

「今週は忙しいから来月にしよう」

とはなかなかいきません。

仕事の予定を調整して歯医者へ行く。

治療内容によっては一度では終わらない。

また次の予約を取る。

とはいえ週末は混雑していてなかなか予約が困難。

さらに大きな治療となれば、費用もかさみます。

そう考えると、

予防歯科に使う時間は「余っている時間」ではないのかもしれません。

未来の自分が

治療に使うかもしれない時間。

何度も歯科医院へ通うかもしれない時間。

それをできるだけ減らすために、先に使う時間。

そう考えれば、

忙しい人ほど、予防歯科へ通う意味がある。

そんな見方もできるのではないでしょうか。

人は「予防」ではなく、その先のメリットで動く

私自身がまさにそうです。

私が定期的に歯科医院へ行く理由は

「3ヶ月経ったから」だけではありません。

あの治療を、できるだけもうしたくないから。

痛い思いを減らしたい。

何度も通院したくない

大きな治療になって、お金をかけたくない。

できるだけ自分の歯で食べ続けたい。

私の中では、

「今日、歯医者へ行く面倒くささ」より、

「将来また治療する怖さ」

の方が大きくなっています。

つまり私が予防歯科に求めているものは、

クリーニングそのものでも、

定期健診そのものでもありません

これから先、できるだけ歯で困らずに生活できる未来です。

「予防歯科に力をいれていまう」だけで、その価値は伝わっているだろうか。

予防歯科に力を入れている歯科医院は、たくさんあります。

ただ、その価値は患者さんにどこまで伝わっているでしょうか。

ホームページに、

「予防歯科に力を入れています」

「3ヶ月ごとの定期健診がおすすめです」

とかいてある。

もちろん、それも大切です。

ただ、それを読んだ患者さんが、

「じゃあ忙しくても時間を作って行こう」

と思えるところまで、予防するメリットは伝わっているでしょうか。

例えば、

「定期健診に来てください」

ではなく、

「できるだけ痛い治療をしなくて済む状態を一緒に守っていきましょう」

「予防歯科に力をいれています」

ではなく、

「忙しい毎日の中で、何度も治療に通わなくて済むように、健康なうちから歯を守っていきましょう」

同じ予防歯科でも、患者さんから見える価値は変わると思います。

その価値は、歯科医院へくる「前」から伝えられる

して、予防の価値を伝えられる場所は診療室だけではありません。

ホームページ

Googleマップ

そこにかかれている口コミ。

ブログやSNS。

患者さんは、歯科医院へ足を運ぶ前から、いろいろな情報をみています。

Googleマップを開いたとき、

「虫歯を治療してもらいました」

という口コミだけではなく、

「何年も定期的に通っていて、良い状態を維持できています」

「子どもの頃から通っているので、歯医者をこわがりません」

「悪くってからではなく、歯を守るために通っています」

そんな患者さんの体験が自然と集まっていたら。

それを読んだ人の、

「歯医者行く理由」そのものが変わるかもしれません。

「痛くなったら行く場所」から「痛くならないために行く場所」へ

「虫歯になったら歯医者へ行く」

という長年の習慣をかえるのは、簡単ではないと思います。

私自身、治療で嫌な思いをしたからこそ、予防の価値を本当の意味で理解しました。

ただ、

患者さん自身が痛い経験をしてから、予防大切さに気付く必要はない。

予防することで何が得られるか。

なぜ、今痛くなくても歯科医院へ行くのか。

その意味をもっと伝えることができれば、

「歯医者へ行かなきゃ」

ではなく、

「自分の歯を守るために、そろそろ行こう」

と思える人は増えるのではないでしょうか

予防を大切にしたい患者さんと、

本気で予防に取り組んでいる歯科医院がもっと出会えるように。

「虫歯になったら歯医者」から

「虫歯にならないために歯医者」へ。

そんな文化を少しずつ広げていきたいです。

参考資料

・口腔衛生学会「事業所での集団歯科検診および歯科医院での個別歯科検診への受診と外来の歯科診療医療費および診療日数との関係:縦断研究」(2024年)

・厚生労働省「歯周病健診について」